信州葡萄酒事情  ソムリエ石田通也の信州ワイン講座 / 第3楽章 ”SWEETS MEET WINE
 
Shinshu Wine Stories
   デザートワイン入門

デザートワイン勢揃い
代表的なデザートワインをタイプ別にご紹介しましょう
デザートワインの明確な定義はありませんが、50g/lの糖度が目安になります。ただし、酸味とのバランスでそれほど甘く感じないこともあるので一概には言えません。細かなことはさておき、作り方はこの6種類に集約されます。

遅摘みワイン

完熟した葡萄を収穫せずにそのまま木につけておくと、乾燥した天候下ではだんだん干しぶどうの様な状態になっていきます。
こうしたブドウからワインをつくると糖分が濃縮されているため、やはり甘口ワイン(遅摘みワイン)が出来上がります。
フランスだとボルドーを流れるガロンヌ河、ドルドーニュ河の上流にあたる地区の一部(ベルジュラックなど)やドイツのシュペートレーゼ、アウスレーゼ、ベーレンアウスレーゼなどのものがこれに当たります。
アイスワイン

遅摘みワインをつくっている間に猛烈な寒波がやってくると葡萄が木に付いたまま凍ってしまう事があります。
この凍った葡萄の実を凍ったまま絞ると水分が凍っているため濃厚な葡萄果汁がとれ、この果汁から造ったワインがアイスワインです。
ドイツのアイスヴァインが有名(同名のドイツ料理とは無関係とのこと)。他にもカナダやオーストリア(アメリカ合衆国でも若干)造られています。
遅摘みの葡萄が凍るためトロッケンベーレンアウスレーゼと同じくらいの糖度になりますが、ボトリティス・シネレア菌の影響が無いため貴腐ワインとは違った風味のワインとなります。
寒波だのみのリスキーなワインのため大変高価です。
クリオ・エキストラクションという人工的に葡萄を凍らせてアイスワインにしてしまおうという方法もあり、桔梗ヶ原など、日本でもこの方法で造られたワインがあります。
アイスワインは完成度が高く、それ自体がデザートとして楽しめますが、その分、マリアージュは実は難しさも。
日本で(女性に特に)人気。

貴腐ワイン

貴腐(きふ)ブドウから造られる最高級の甘口ワイン。
濃厚でコクと旨味があり、特にデザートワインとして珍重されています。
セミヨン種など白ワイン用品種のブドウが、特別な気象条件下でボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea) 菌に感染すると糖度の非常に高い干しぶどうのような状態になります。
これが貴腐ブドウで、腐敗したように見える外見からは想像できないような芳香(貴腐香)と風味を持ったワインが醸造されることからフランス語ではプリテュール・ノブル (pourriture noble=高貴なる腐敗)といいます(日本語の「貴腐」はその直訳です)。セレクトは手作業で行われます。
ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、フランス・ボルドーのソーテルヌ、ハンガリーのトカイが世界三大貴腐ワインと呼ばれています。
ちなみに、トロッケン=乾いた、ベーレン=粒、アウスレーゼ=セレクト(レーゼは収穫)ソーテルヌには法規制があり、甘口ばかり作っています。トカイはよくブドウの名称と間違えられるが産地名。プットニュスという単位を用い、最高峰はアスー・エッセンシア(アスー=”蜜のような”
)。ドイツのものは上品
VDN(Vin Doux Naturel)ヴァン・ドゥ・ナチュレール

発酵中のワインにブランデーを添加し、発酵を止めることによって葡萄のもつ天然の(=Natuel)甘さ(=Doux)をアルコールに転化させずにそのまま残したワインです。1L中に250g以上の糖分が残るので飲んだ時に不自然さがありません。
樽・瓶で通常2〜3年、長いものは10年以上熟成させます。多くの場合、熟成期間が長いほどなめらかで深い味わいになります。
VDNは使用する品種によって大きく2つに分けられます。
(1)芳香に富むミュスカ種を使うもの。コート・デュ・ローヌ南部が代表的な産地です。
(2)アルコール分が強くフルーティなグルナシュ種を使うもの。代表的な産地はルーション地方です。
VDL(Vin de Liqueur)ヴァン・ド・リクール

発酵していない葡萄果汁に蒸留酒(ブランデー)を加えて樽・瓶で熟成させます。このためブランデーの名産地で作られ、高級なものもありますが、大衆的なものが多いです。VDNに比べると両者のセパレート感があり、カクテルに近いニュアンスがあります。
糖分は1L中170g以上存在します。ほとんど18度くらいのアルコール設定。
「ブランデー+ジュース」で、ご家庭でもできてしまいそう。食前酒にも向きます。
代表的なものにコニャック地方のピノー・デ・シャラントやアルマニャック地方のフロック・ド・ガスコーニュがあります。
VDLは長く熟成させたタイプの他に、比較的早くから楽しめるタイプもあります。
VDN やVDLはどこにでもおいてあるという商品ではありません。

VIN DE PAILLE ヴァン・ド・パイユ 

直訳すると "藁(わら)のワイン
"。昔は何ヶ月も藁の上で乾燥させて糖度を高めた葡萄で作ったためこの名がつきました。
今はすのこの上で乾燥させたり、つるして作られます。この
スタイルのワインは、Passerillage〈 パスリヤージュ 〉と記されていることもあります。

フランス東部ジュラ地方のアルコール度数の高い甘口ワインで稀少なことでも有名。
10年以上保存がききます。

100kgの葡萄から20リットルしかとれませんが、1リットルあたりの糖分は30gも。

アルコール分はその年毎に微妙に異なって、1418.5度。
6
℃〜8℃に冷やして、食前酒としてはもちろん、前菜やデザートと一緒に、食後酒にと幅広く楽しめます。

相性がいいのは、フォアグラ、クルミとチーズ、あんず、クルミ、アーモンドなどの甘いタルト、そしてチョコレート系のデザートなど。