信州葡萄酒事情>session3 : シェフ藤木徳彦のワイナリー探訪 五一ワイン篇 / ワイナリーの紹介 / | |
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五一ワイン篇 / ワイナリーの紹介 |
Shinshu Wine Stories |
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「夢ふくらむ 五一ワイン」のフレーズでお馴染みの林ワイナリーがワイン醸造を始めたのは1919年。 当初は甘味葡萄酒の原料ブドウを栽培していたが、1953年にはすでにメルローを育て始めるなど、高品質なワインへのこだわりは昔からだ。ワイナリーのブドウ畑の一角には、信州で最初に植えられたという樹齢50年を超えるメルローの樹が1本残っていて、今でも200から300房もの実をつける。 7ヘクタールの自社畑には、垣根式、棚、ポット栽培とさまざまな方法で15品種ほどのブドウが栽培されている。同じ品種でも複数の系統を試作するなど、畑を一巡するだけでワイナリーの研究熱心さが伝わってくる。戦後、奥さんとふたりで各地のワイナリーを巡って勉強したという林幹雄社長の心意気が、農場の隅々にまで浸透しているのだろう。 偶然の産物でしかない「貴腐ブドウ」が発生するのも、五一ワインの魅力だ。大冷害が訪れた1993年、糖度が上がらず収穫を遅らせて様子を見ていたある日、現場スタッフが血相を変えて醸造責任者・猪狩氏のところへ報告に来た。「シャルドネが全部腐っています!」ブドウが突然一斉に腐るのはおかしい、と畑へ急いだ猪狩氏の直感通り、それは貴腐菌だった。菌の発生は自然条件に左右されるため年によって収量や品質は異なるものの、それ以来貴腐ワインの醸造が始まり、2000年にはスロベニア・リュブリアナ国際ワインコンクールで金賞を受賞するまでの味わいとなった。 林社長曰く、「栽培にスマート方式を取り入れるようになってから、ワインの品質も格段によくなった」という。スマート方式とは、オーストラリアのブドウ栽培学者リチャード・スマート氏の提唱する栽培方法で、支柱に対しブドウの枝を垂直に且つ一方向へ伸ばしていくものだ。手入れが楽なうえ、ブドウの房ひとつひとつにまんべんなく陽光が当たり、湿度の高い日本の気候でも凝縮感のある味わいのブドウが育つという。今では注目を集め、他のワイナリーが見学に訪れるこの栽培方法も、林社長が着手した頃にはほとんど知られていなかった。我々が美味なる五一ワインを堪能できるのも、社長のチャレンジ精神のお陰であろう。 |
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